今回は「介護離職」と働き方について職場環境を提供する企業側にインタビューを行い、働き方に関する制度導入の意図や介護離職者の採用実例をうかがいました。

インタビューを受けた方
角谷 潤
サーバーフリー株式会社 代表取締役
Web関連のシステム開発事業に加え、人材サービスはたかなの運営も行うサーバーフリーの代表を務める。積極的なテレワーク、フレックス制度の導入や時短勤務など働く人視点での「働きやすい環境」を目指す。

ブランクよりも、介護に向き合う「人柄」に惹かれ

ーー社員の人数を教えてください。

角谷:社員、派遣社員、業務委託契約を合わせて約120名です。

ーー働きたい方、働いている方の中には子育てや介護といった各々の事情を抱える方もいらっしゃるかと思います。採用する際、そういった背景のヒアリングも行うのでしょうか?

角谷:中途採用の場合は話の中で前職をやめた理由を伺うことはあります。例えば介護を理由に離職をしていたなどと聞くと、あ~すごいな、この人は大切な人に対してちゃんとしっかり向き合える人なんだなと、印象としては逆にいいですね。

ーー最近もいらっしゃいましたか?

角谷:先日面談をした男性の方は、おばあちゃんの面倒を見るために前職を辞めたデイサービスに連れて行かなきゃいけないから(それを実現できる転職先としてエントリーした)と。20代後半のあの若い男の子が、逆にそれもすごいなと思って。
前職場で、介護があるので仕事を週1日休めないかと相談をしたらしいんですけど、そこではダメだと言われて退職を決意したと言っていましたね。

ーーほかにも介護離職後9年のブランクを経て入社されているエンジニアの方がいるとお聞きしました。採用の際にブランクは気になりましたか?

角谷:確かに、プログラムを書くような作業であればある程度ブランクや過去の経験をみます。ですがその方にお願いしたいタスクがPMOつまりお客さまとの調整がメインだったことと、離職までの経歴がしっかりされていたのでブランクはあまり気にならなかったですね。採用時はプロジェクトの補佐的イメージでいましたが今ではすっかり中心的存在です。

ーー介護の課題が出てきた方に対して、柔軟な働き方の希望を受け入れられない会社と、サーバーフリーのように受け入れられる会社の違いはなんでしょうか?(開発会社を例に)客先常駐など業務内容の違いでしょうか?

角谷:そうですね。テレワークやフレックス勤務で進められる業務内容・環境か否かで全然変わってくる。業種次第ということになりますね。

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フレキシブル=最高のパフォーマンスを生み出す環境づくり

ーー柔軟な働き方を実現するために貴社で取り入れている制度などはありますか?

角谷:テレワークやフレックス勤務制度を導入しています。ひと月の中で所定の時間働けばいいので今日は10時間やって明日は6時間とか、今日は朝の6時から始めて昼で仕事終わりにするとか、結構みんな自由にやっていますよ。
(画像はサーバーフリー(株)オフィスのリラックススペース)

ーーそういった働き方を取り入れる事で、介護などの事情に限らず誰もが働きやすい環境になっているという事ですね。

角谷:言い方は悪いかもしれませんが個々の事情は会社には関係なくて、与えられた仕事をきっちりこなしてくれれば、それ以外の時間は関与しないという考えですね。

ーー離職者の発生は会社にとって人材やスキルの損失に繋がるとも考えられます。より良い職場環境の提供はそれらを防ぐ意図もあるのでしょうか?

角谷:やっぱり各自が一番パフォーマンスの出る時間帯・やり方で仕事をしてもらうのがベストだと思っていまして。人材を引き止めるというよりも、例えば今日ちょっと調子悪いから、半日で仕事を終えようとか、今日はすごくなんかノッてるから10時間ぐらいやってしまおうとか、本人が最高のパフォーマンスを出せる時に仕事をしてほしいというのが、一番の狙いになってますね。

ーーなるほど、それが会社にも好影響を及ぼすということですね。

角谷:通勤時間なんて本当に無駄だと思っていて。片道1時間の場合、テレワークすれば1日2時間有効に使える。朝9時からの会議にも8時50分に起きれば間に合う!みたいな(笑)。

ーーテレワークやフレックス勤務の場合、勤務場所や時間がバラバラですが社員の勤務をどのように把握し評価をしているのですか?

角谷:勤務の管理コントロールが難しいところはありますね。例えばお願いしたタスクがやってみたら意外と難しくて思ったよりも時間がかかったり、逆に期限まで1週間あるタスクを1日で終わらせて、あと6日遊ぶことも出来てしまったり。いずれにせよ主にはタスクの達成度で把握・評価を行なっているといえます。

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介護だけではない。パーソナライズされた働き方で2ヶ月の『パパ休』も!

ーー介護や子育てのため勤務時間に融通を効かせたい社員がいるとして、他の社員への配慮やフォローアップは何かされていますか?

角谷:フルタイムが難しい場合は時短正社員という採用があり、その分給与も下がりますから周りも納得していると思います。逆に、フレックス勤務制度を利用し、介護をするけどフルタイムきっちり働きますというのであれば、それも何ら支障はないと思っています。

ーー事情がどうあれ、各々が自分に合った働き方を選択しているということですね。

角谷:そうですね。介護なのか遊びに行ってるのか旅行なのか、僕らはそこまで何も関与しませんから。

ーー介護休暇、介護休業を取得された事例はありますか?

角谷:若い社員が多いので介護関連はまだないですが育児休暇=「パパ休」はありますよ。「パパ休」で4週間、あと有給を20日間で全部合わせて丸まる2ヶ月休むとの申し出があって。それも全然OKですね、はい。

ーーそういった申し出を言い出しやすい社内風土作りや、1on1の実施を行なっていますか?

角谷:特にはないですね。マネージャーと呼ばれている立場の人間が食事の席などでコミュニケーションを取っているのは聞いています。逆にもう僕はあまりそこに関わらない方が良いのかなと思っていて。多分、僕の悪口を言いたいでしょうし(笑)。みんな仲良く結構おしゃべりをしてるみたいなのでそれでいいかなと。

ーー一般的に、上司や仲間に悩みを相談できずに離職をするケースが多いとのデータがあるのですが、やはり普段からの社内の繋がりが関係するのでしょうか?

角谷:相談できる上司や仲間も大事だとは思いますが、僕の感覚からいくと辞める辞めないは結局は職場環境・労働環境が根本原因かと。だからいくら周りが「もうちょっと頑張ろうぜ」なんて言っても続かない。自由にフレキシブルに、テレワークや在宅で働けるという環境を与えればそう簡単に辞めたい、他に行きたいって思われないかなというところですかね。
悩みを聞いて救ってあげるというよりも、その本人がどこに不満を持っているのか、例えば有給が少ないとか、有給を取りにくいとか、給料が安いとか、そこを物理的に改善する方が会社にとってもメリットがあると思っています。

ーーフレキシブルな職場環境を提供することで会社側が大変になった点はありますか?

角谷:担当部署により、出社をして客先で作業が必要な社員と、完全にテレワークでほとんど出社しない社員がいるのでそういう不公平感というのが難しいですね。全員に平等に同じ勤務条件を与えられないという点においては、賞与などでそれぞれを評価するようにしています。

働く、の新しい概念を持たねば生き残れはしない

ーー最後に、システム開発業界はテレワークやフレックス勤務といった柔軟な働き方という点においてはまだまだ保守的な会社が多いという印象はありますか?

角谷:難しいですけど、ただこういったことを積極的に取り入れていかないと良い人材が集まらない。そもそも人が足りていない中でいかに人材をキープするのかということです。
社員が出社してると安心する、そんな理由だけでスーツを着て朝9時に出勤させている会社もありました、昔。1000人社員がいたら往復2時間で2000時間、1日2000時間を無駄にするという概念を持たないとこれからは生き残れないと思います。恐竜が滅びたように、生き残れないなと。

ーー会社にとって何がメリットなのか。その価値のアップデートが求められ、そこには働く「人」の存在が不可欠なのだなと強く感じました。
本日はありがとうございました。

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