多くの企業のクラウドサービス導入により、近年クラウドエンジニアの需要が高まっています。「クラウドエンジニアへの転職に興味があるけれど、どんなスキルが必要で、年収はどれくらい?」と疑問をお持ちの方も多いでしょう。
今回は、クラウドエンジニアの転職市場の現状から具体的な仕事内容、必要なスキル、年収相場、将来性について紹介します。キャリアアドバイザーの視点から転職成功の秘訣も解説しますので、クラウドエンジニアへの転職を検討している方はぜひ参考にご覧ください。
【監修】はたかなキャリアアドバイザー 坪谷 潤
若手ハイキャリアからミドル世代まで、幅広い層の転職支援に携わる。丁寧な対話と実効性の高いサポートによる、長期的なキャリア設計支援が強み。
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クラウドエンジニアの転職市場の現状
まずはクラウドエンジニアの転職市場はどうなっているのか、最新の動向を見ていきましょう。「はたかな」のキャリアアドバイザー小濱さんにお話を伺いました。
クラウドエンジニアの最新の転職市場について教えてください。
クラウドエンジニアの転職市場は、“超売り手市場” が続いています。多くの企業でクラウドを導入する体制づくりが進んでおり、特にAWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、GCP(Google Cloud Platform)といった主要クラウドプラットフォームの経験をもつエンジニアの需要は非常に高い傾向にあります。
求人数も増えていますか?
求人数は右肩上がりで、コロナ禍以降リモートワークが普及したこともあり、地方在住のエンジニアにも都市部の優良企業の案件に参画できるチャンスが広がっています。
以前はインフラエンジニア経験者が主なターゲットでしたが、最近ではアプリケーション開発エンジニアがクラウドスキルを身につけて転身するケースや、異業種から学習を経てクラウドエンジニアを目指す方も増えています。企業側も即戦力だけでなく、ポテンシャル採用の枠を広げる傾向にあり、経験が浅い方にとっても大きなチャンスといえるでしょう。
市場価値を高めるためのポイントはありますか?
企業が求めるスキルレベルも徐々に上がってきているため、継続的なスキルアップは不可欠です。特に、クラウドネイティブな設計・構築経験や、DevOps、コンテナ技術(Docker, Kubernetes)、IaC(Infrastructure as Code)といった高度なスキルが求人票に記載されるケースも増えており、継続的な学習や資格取得が市場価値を高める鍵となります。
転職前に知っておきたいクラウドエンジニアの基本情報

転職をふまえて、クラウドエンジニアの基本的な情報を押さえておきましょう。
クラウドエンジニアの仕事内容
クラウドエンジニアは、企業のITインフラをクラウド環境で設計・構築・運用する専門職です。主な仕事内容は、以下のとおりです。
◆クラウドインフラの設計・構築
企業の要件に合わせて、AWS、Azure、GCPなどのクラウドプラットフォーム上に最適なシステムアーキテクチャを設計します。仮想サーバー、ストレージ、ネットワーク、データベースなどのリソースを選定し、実際に環境を構築します。可用性、拡張性、セキュリティ、コストなどを考慮した設計が必要です。
◆クラウドインフラの運用・保守
構築したクラウド環境が安定的に稼働するように、監視、パフォーマンスチューニング、障害対応、バックアップ、アップデートなどを行います。クラウドサービスの利用状況を分析し、無駄なリソースの削減や最適な料金プランの選択により、クラウド利用コストを最適化します。
◆自動化・効率化
IaCを活用し、インフラの構築・管理を自動化します。TerraformやCloudFormationなどのツールを使用して、再現性の高い環境構築の効率化と品質向上を図ります。
クラウドエンジニアの年収の相場
クラウドエンジニアの年収は、経験年数やスキルレベル、保有資格、勤務先の企業規模などによって大きく異なります。「求人ボックス 給料ナビ」の調査によると、クラウドエンジニアの平均年収は約580万円です。これは、日本の給与所得者の平均給与530万円を上回っており、ITエンジニアの職種の中でも比較的高い水準です。
参考:求人ボックス 給料ナビ「クラウドエンジニアの仕事の年収・時給・給料」
参考:国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
クラウドエンジニアの将来性
クラウドエンジニアの将来性は明るく、今後も需要が高い状態が続くといえるでしょう。その理由には、以下の3点が挙げられます。
今後もクラウド市場は拡大
国内のクラウド市場は、今後も成長すると予測されています。総務省の「令和6年版 情報通信白書の概要」によると、日本のクラウドサービス市場規模は、2023年に約3.1兆円だったところ、2028年に6.5兆円を超える見込みです。この流れから、クラウドエンジニアの需要は増加し続けると考えられます。
参考:総務省「令和6年版 情報通信白書の概要」
深刻なエンジニア不足
経済産業省が委託した調査によると、2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると予測されています。特にクラウド分野は新しい技術領域であるため、スキルを持った人材が圧倒的に不足しています。クラウドエンジニアへ転職を希望する人にとっては、有利な転職環境といえます。
参考:みずほ情報総研株式会社「IT人材需給に関する調査」
技術の進化と推進役としての需要の増加
AI、IoT、ビッグデータなど、新技術とクラウドの融合が進んでいます。クラウドエンジニアは、これらの最新技術を活用する推進役として、より高度な役割を担うことが期待されています。
クラウドエンジニア転職で求められるスキル・資格
クラウドエンジニアへの転職を有利に進めるためには、どのようなスキルや資格が求められるのか、見ていきましょう。
クラウドエンジニアに求められる必須スキル・資格
クラウドエンジニアとして転職を成功させるために必要なスキルと資格について、解説します。
必須スキル
◆クラウドプラットフォームの知識
- AWS、Azure、GCPのいずれかの実務経験
- 主要サービス(コンピュート、ストレージ、ネットワーク、データベース)の理解
- クラウドアーキテクチャのベストプラクティスの理解
◆インフラ基礎知識
- Linux/Windowsサーバーの構築・運用経験
- ネットワーク(TCP/IP、DNS、ロードバランサー)の基礎知識
- セキュリティ(ファイアウォール、暗号化、認証・認可)の理解
◆プログラミング・スクリプティング
- Python、Bash、PowerShellなどのスクリプト言語
- Infrastructure as Code(Terraform、CloudFormation)の経験
- CI/CDパイプラインの構築経験
評価が高くなるスキル・経験
- マルチクラウド対応力
- コンテナ技術(Docker、Kubernetesの実務経験)
- DevOps実践経験
- 大規模システムの構築経験
- プロジェクトマネジメント経験
推奨資格
資格は知識の証明となり、転職活動で有利に働くケースが多いです。特に実務経験が浅い場合には、以下の資格取得を目指しましょう。
- AWS認定(Solutions Architect、DevOps Engineer)
- Microsoft Azure認定(Azure Administrator、Azure Solutions Architect)
- Google Cloud認定(Associate Cloud Engineer、Professional Cloud Architect)
【関連記事】エンジニアのキャリアパスは?おすすめのスキルアップ方法も解説
未経験からでも挑戦できる!クラウドエンジニア転職のための学習
未経験からクラウドエンジニアの転職を目指す場合のおすすめステップを紹介します。
▼おすすめの学習ステップ
- 基礎知識の習得
・ITパスポート、基本情報技術者試験の学習
・Linux基礎コマンドの習得
・ネットワークの基礎知識(CCNA相当)の学習 - クラウドの基礎学習
・AWS、Azure、GCPの無料枠を活用した実践
・公式ドキュメントとハンズオンラボを活用
・Udemyなどのオンライン学習プラットフォームを活用 - 資格取得へ
・AWS認定クラウドプラクティショナー
・Azure Fundamentals(AZ-900)
・上記資格取得後、アソシエイトレベルへ挑戦
▼資格取得のすすめ
資格取得は、未経験者にとって特に重要です。一定レベルの知識をもっていることをアピールでき、書類選考の通過率を向上させられます。学習を通じて、実務で必要な知識も効率的に習得できます。
【キャリアアドバイザー解説】クラウドエンジニア転職活動の進め方

ここからは、クラウドエンジニアへの転職活動を成功させるための具体的なポイントを解説します。
自己分析・スキルの棚卸
転職活動の第一歩は、自己分析とスキルの棚卸しです。以下のポイントについて整理しておきましょう。
現在の経験・スキルレベルを洗いだす
- 使用経験のあるクラウドサービス
- プログラミング言語・スクリプトの習熟度
- インフラ関連の知識・経験
- 経験したプロジェクトでの役割と成果
強み・弱みを把握する
- 得意分野やアピールできるポイント
- 今後強化すべきポイント
今後の方向性を明確にする
- クラウドエンジニアとして働く理由
- キャリアの方向性の明確化(技術特化型か、マネジメント志向か)
- 業界の種類、企業規模
- 年収、勤務条件、勤務地
自分に合った企業へ応募
続いて、求人探しです。求人探しでは、自分に合った企業を見極めるために、以下の点をチェックしましょう。
- 業務内容
・具体的に携わりたい業務か
・やりたいことと合致しているか - 使用する技術・プラットフォーム
・自分が得意とするプラットフォームか - プロジェクト規模・内容
・大規模案件か、中小規模か
・新規構築が多いか、運用保守がメインか - スキル・資格
・自分のスキルセットとマッチしているか
・不足分を入社後にキャッチアップできるか
・資格要件の有無はマッチしているか - 企業の事業内容・社風
・どのようなサービスを提供しているのか
・企業の将来性があるか
・学習支援制度やスキルアップの機会はあるか
・チームワーク重視か、個人の裁量が大きいか
・リモートワークは可能か - 待遇・福利厚生
・年収と評価制度
・残業時間
・有給取得率
採用担当者に響く応募書類の作り方と面接対策
職務経歴書でアピールしておきたいポイントと面接の対策について紹介します。
◆職務経歴書のポイント
職務経歴書では、クラウド関連のスキルや実績を具体的に記載しましょう。
担当したプロジェクト詳細 | 規模、期間、役割を明確に記載 |
使用技術 | クラウドサービス名を具体的に列挙する |
成果・実績 | コスト削減率、パフォーマンス改善率などを数値で記載 |
取得資格 | 認定資格名、取得年月も明記 |
自己PR | クラウドエンジニアへの熱意、学習意欲を具体的に記述 |
◆面接対策
面接前にチェックしておきたいポイントは、以下のとおりです。
1.企業研究
・応募先企業の事業内容、クラウド戦略の事前調査
・自分なりの言葉で準備
2.想定される質問への対策
・「なぜクラウドエンジニアを目指すのか」
・「最も困難だったプロジェクトと解決方法」
・「自分の強み・弱み」
・「入社後、どうなりたいか」
・「今後身につけたい技術・スキル」
3.オンライン面接の準備
・カメラやマイク、照明の調整
・背景の設定
クラウドエンジニア転職後のキャリアパス
クラウドエンジニアとして転職したあとも、さまざまなキャリアパスが考えられます。転職活動を始めるにあたって、明確にしておきましょう。
◆スペシャリストへ
特定のクラウドプラットフォームでの専門性を高め、より高度な設計や構築、コンサルティングなどを担います。
◆マネジメントへ
クラウドインフラチームのリーダーとしてメンバーを率いたり、クラウド導入プロジェクト全体の計画・推進・管理を行います。技術力に加え、マネジメントスキルやコミュニケーション能力が求められます。
そのほかにも、企業のクラウド戦略を支援するクラウドコンサルタントや、開発と運用の融合を推進するDevOpsエンジニアなどの専門職の道も考えられます。
【関連記事】エンジニアの「上流工程に移りたい」を叶えるキャリアパス案 ~システム開発会社の人事部が教えます~
【キャリアアドバイザーが解説】クラウドエンジニア転職活動のコツ
ここでは、「はたかな」のキャリアアドバイザー坪谷が、クラウドエンジニアへの転職を成功させるコツを解説します。
【コツ1】転職の理由は印象を悪くしないよう“目指す方向性と現在のギャップ”を伝える
転職の理由を聞かれたときは、「自身のキャリアの方向性と現在地のギャップ」に言及することが鍵です。
ネガティブな要因は採用担当者に印象を損ねてしまう可能性があります。「なぜ転職をするのか」「転職後に何をしたいのか」をポジティブに伝える説得力が必要です。以下の例を参考に、検討してみてください。
▼具体例
・「業務が安定稼働フェーズに入り、新しい設計や検証といったチャレンジの機会が減ってしまったため、次のステップに進もうと決断しました」
・「入社してみると業務内容や開発環境が募集当初と大きく異なっていたため、やむを得ず短期間での離職となりました。ただ、そうした経験も企業選びの視点を深める学びになりました」
【コツ2】企業面接は3件以上受ける
企業との面接は、双方のニーズをしっかり確認し合える重要な機会です。事前情報だけで決めずに、面接後に判断することをお勧めしています。
「他の選考と並行して検討中」と伝えることで、企業側の対応が前向きになります。より好条件の提示がもらえるケースもあり、複数企業との面接はメリットの方が多いですね。
【コツ3】転職エージェントを活用する
多くの転職エージェントは、一般には公開されていない「非公開求人」の情報を保有しています。希望に合った求人に出会う可能性を高めるためにも、転職エージェントの活用をおすすめします。
エージェントの魅力は、自分からは伝えにくい企業への条件交渉も、転職市場の動きや給与条件の相場感を把握したうえで代行してもらえる点です。エージェントから、こうした “転職の裏事情” などの情報サポートを受けながら動けるので、結果的に同じスキルをもつエンジニアとは大きな差をつけられます。
クラウドエンジニアへの転職のご相談は「はたかな」へ
「はたかな」は、サーバーフリー株式会社が運営する人材紹介・派遣サービスで、IT・Webエンジニアに特化した「はたかなNEXT for Engineers」も展開しています。転職希望者の方一人ひとりに合った、最適な転職活動を全力でサポートします。
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まとめ:クラウドエンジニアに転職して新しいキャリアを築こう
クラウドエンジニアの転職市場は、売り手市場が続く見込みです。必要なスキルを身につければ、未経験からでも転職のチャンスがあります。
転職成功のポイントは、計画的なスキル習得と自分に合った企業選びです。転職エージェントのサポートを活用しながら、理想の転職を実現させましょう。
「はたかな」は、転職を希望する方が理想とする働き方をかなえるため、全力でサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。