高齢化が急速に進む中、介護と仕事の両立は大きな課題となっています。
家族と向き合う時間がとれない罪悪感や思うように働けないことへの不安を抱える人も多いのではないでしょうか。
この記事では介護と仕事を両立させるためのコツや両立させやすい働き方の紹介をしています。
実際に介護と仕事の両立を経験した方の体験談も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
介護と仕事の両立が難しい理由
介護と仕事の両立が難しい3つの理由を解説します。
肉体的・精神的な負担が大きい
介護と仕事を両立していると心身への負担が大きく疲弊してしまうケースが多いです。
そもそも介護だけ、仕事だけでも毎日大変という人が多い中で、その2つを両立するのはどう考えても難しいはず。
介護では力のいる場面も多いですし、要介護家族の状況によっては夜もなかなか眠れない可能性もあります。仕事から帰ってきて介護を続ける日々は、体が休まる時間がなく体力的にしんどくなってしまうのです。
また、「介護も仕事もちゃんとやらなきゃ」とプレッシャーを感じたり、自分の時間が全くとれずにストレスを感じたりと精神的な負担が大きいことも問題です。
「介護は家庭内の問題だから」と周りに相談できずに1人で抱え込んでしまうと余計にしんどくなってしまい悪循環になることも。
介護と仕事を両立させるには、周囲の理解やサポートが不可欠です。限界まで我慢せずに早めに対策しておくようにしましょう。
キャリアを諦めざるを得ない
家族の介護を理由に離職をする「介護離職」。毎年10万人程度が介護離職をしているといわれています。
特に40代以降の介護離職者が多く、それまで積み上げてきたキャリアを捨てて離職を選択する人も多いと思われます。
介護はいつ終わるのか、状況がどう変わっていくのか、といった未来が不透明なケースが多く、先が見えない不安から仕事を続けられないとの判断に至るようです。
仕事を続けるにしても、残業ができない、欠勤が多くなる、疲労で仕事に集中できない、といった理由から思うように働けない人もいます。
育児も重なりダブルケアラーになる可能性
ダブルケアとは未就学児の育児と介護を同時に行うことで、ダブルケアを行う人をダブルケアラーと呼びます。
平成25年の内閣府男女共同参画局の報告によると全国のダブルケアラーの数は25万3,000人、そのうち女性が16万8,000人となっています。
また、ダブルケアを行う女性のうち約半数の46.5%は仕事をしており、23.2%はフルタイムなど仕事を主としているということです。少子高齢化、晩婚化が進んでいることから、ダブルケアラーの数は増加することが予想されます。
仕事をしながら介護と育児を行うのは並大抵のことではありません。子どもの月齢によっては目を離せず、そこに介護までするとなると家にいても気が休まる暇もなくなるでしょう。
介護・仕事を両立する方法
仕事と介護を両立させるコツを紹介します。
制度・サービスを利用する
介護と仕事を両立させるには、制度やサービスの活用は必須だと思っておきましょう。
自分で全部しなければ、と思う人もいるかもしれませんが、無理をしてあなたが体調を崩す事態は防ぐべきです。
- 介護保険サービス
- 介護休業/介護休暇
- 介護短時間勤務
介護保険サービスは要介護者が、介護休業や短時間勤務は介護者が使えるサービス・制度です。
詳しくは制度・サービス編で解説しているので、こちらを参考にしてください。
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★介護と仕事を両立させる方法やコツを解説【制度・サービス編】
家庭内で役割分担をする
介護と家事の負担があなたに集中しているのであれば、家族での役割分担を見直しましょう。
介護が始まる前の流れのまま家事をすべてしているケースが多いと思いますが、それでは時間と体力が足りなくなってしまいます。
パートナーや年齢によっては子どもにも家事や介護を分担して、家族を巻き込んでいくと精神的にも楽になるはずです。
働き方を見直す
介護をきっかけに働き方を見直すという選択肢もあります。
時短勤務やパートに変更して今の仕事を続けるほかにも、転職をして時間や場所の自由がきく仕事をすることもできます。
介護は長期戦になることも多いですし、無理なく働き続けられる環境を自分で作っていくのも両立のコツです。
介護しながらできる仕事・働き方とは?
介護と両立しやすい仕事や働き方を紹介します。
時短勤務をする
育児時短勤務を取得する人は多いですが、実は介護を理由に時短勤務をすることもできます。
デイサービスなどの利用時間に合わせたり、家にいる時間を増やして家事や休息にあてたりなどが可能です。
勤務時間等については会社によって異なりますので、一度確認してみるといいでしょう。
リモートワークができる仕事にする
最近ではリモートワーク中心の仕事も増えてきています。家で仕事をすると急な事態にも対応しやすいですし、通勤にかかる時間や体力を節約できます。
柔軟に働ける環境は介護以外にも、子どもとの時間や自分の時間を作りやすいといったメリットがあり、時間を有効活用できるためおすすめです。
フリーランスに転身する
会社に所属せず、フリーランスで仕事をする方法もあります。
フリーランスのメリットは、状況に合わせて仕事を調整できることです。家族や自分の状況によって仕事をセーブすることも可能なので、しっかりと家族と向き合える環境を作りやすいです。
もちろんフリーランスとして食べていくのは簡単ではなく、スキルや営業活動が必要となってきますが、メリットも大きいため選択肢として考えてみてもいいでしょう。
【実体験】介護と仕事を両立させる苦労と乗り越え方
実際に介護と仕事の両立を経験し、介護をきっかけに現在はフリーランスとして活躍しているSさんの実例を紹介します。
項目 | 当時の状況 |
---|---|
仕事 | フルタイムの正社員 出勤に片道30分 仕事終了は19時くらい(残業あり) |
子ども | 高校受験を控える中学生2人 |
要介護者 | 実家で生活している両親母(要介護)が入院し、認知症の父(要介護)が一人暮らしになる 実家との距離は片道2時間程度 |
タイムスケジュール | 《平日》仕事終わり(19時頃)に実家へ行き父の介護 《休日》父と一緒に母の病院へ行く 父の買い出しや認知症対策のメモ、薬の管理などを行う |
両立の苦労
当時のSさんは仕事、家事、子育て、介護をこなし、時間が足りずすべててのことがマイナスに向かっていたといいます。
ご両親と向き合う時間がなかなかとれず、認知症の父親を一人にする時間が長く、母親の病院へも週末にしか行けない状況でした。
また残業ができず同僚へ負担をかけていることや、高校受験を控える子どもたちとの時間が減ってしまうことも気になるポイントだったとのことです。
乗り越えた方法
平日の日中はヘルパーに父親をみてもらって夜や休日は自身が介護をする、という日々を送っていたSさんでしたが両立は無理だと感じるようになり、当時の上司からのアドバイスで介護休業を取得することにしました。
勤務と通勤にかかっていた10時間もの時間を介護や子育て、家事にあてられるようになり、時間にゆとりが持てるようになったといいます。
当時を振り返ってSさんは「時間に余裕ができ、毎日を、両親含め家族のことに費やすことができてよかった」と語っています。
介護と仕事の両立で悩んでいる人へ
最後にSさんに現在介護と仕事の両立で悩んでいる人にメッセージをいただきました。
悩んでいることがあるのであれば、1箇所ではなく複数人、複数箇所に相談をして知恵を借りてみてほしいです。介護の方法、仕事の方法は多様です。それぞれの事情に合わせた介護×働き方の形があると思うので、より良い環境を作るための情報収集はおすすめします。
あとは、自分だけでなんとかしようとせず、信頼できる人にはわがままを言ったり頼み事をしていいと思います。それで断ってくる人はそれまでです(笑)。
当時のSさんは介護休業の存在を知らずに無理をしていたそうですが、上司からのアドバイスで休業を選択し、給付金のおかげで収入が激減せずにすみました。周囲のアドバイスや、制度やサービスの活用が状況を打開するきっかけになった事例ですね。
また、Sさんは介護休業をきっかけに働き方を見直すようになり、現在はフリーランスとしてフルリモートで働いています。家族の状況に合わせて柔軟に働ける環境は自身に合っており、もっと早く転身すればよかったとも語っていました。
まとめ
介護と仕事の両立は心身への負担が大きく、すべてを一人でこなそうとすると逆にすべてが上手くいかなくなってしまうケースが多いです。
家族や職場への理解や協力を得ながら、制度やサービスをうまく活用することが両立の鍵となっています。
リモートワークやフリーランスなど柔軟な働き方に変えるという選択肢もあり、働きながら家族との時間を作りやすくなります。
大変な状況だからこそ、自分自身のことも大切にして、ベストな選択は何かとじっくり考えてみてください。
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